2018年12月30日

年のせい

歳とって涙脆くなるってのは、別に涙腺が物理的に緩むからじゃない。

年齢を重ねて共感できるものの量が増えて、想像力が増して、思い出の既視感に色んなものが触れるから、だから感動して涙が出るんだと思う。

そしてそんなことはとっくのとうに誰もが気付いているということも知っている。


柿喰う客『美少年』を観ての話。



これからきっと色んなことが当たり前になって感動することにすら慣れて、立ち止まったり天を仰いだり足元を見なくなったり、身の回りの近いもの些細なことどんどんどんどん灯台下暗しになるのかもしれんけど、その都度いつも固まり始める思考と心をぐちゃぐちゃ揉み解して、なんでも抱きしめて許容できる人間で居たい。

この想いが届けって、諦めず意地汚く必死で情けなくてもいいから想い続けてきっと伝わると信じて、ボロボロに生きていきたい。


四六時中、帰る場所があるのだと思いを馳せられることを幸せだと思う。

四六時中、誰かに逢いたいと請い願えることを幸せだと思う。

それが届くかどうかは誰にも分からないけど、そうやって突き進めている自分のことを、少なくとも自分は好きだし肯定できる。


人を、ものを、ことを、疑う気持ちは一生消えない。

一度、痛い目を見たらそれがきちんと経験となってその後の人生を測れるくらいの道標になる。

猜疑心は恐怖ではなくて今自分がどこにいるのかを教えてくれる重要な感覚だ。

冷静に穏便に、でも迅速に『本当に知りたいこと』を騙し騙してそれでも核心に迫らなくてはいけない。

それが本当に難しいし心苦しい。


だとしたら。

自分で自分を肯定して。

正しいと思うことを正しく突き進むしかない。

同時に、その道中で取り零していく全てはもうその正しさの名の下に蹴散らすしかないのかも知れない。

灯台下暗しのその下にも明かりを当てて目を凝らして良く見据えて、そこに何かがあることをちゃんと認識してあげるだけで少しだけ、歩みの強さは変わるのかも知れないし。


演劇は、見過ごしてきた見落としてきた見ないようにしてきた足元にも道程にも全てにも須らく明かりを当ててくれている。

それの善し悪しを決めるのはやっぱり自分でしかなくて、何かと照らし合わせて比較して周りと歩調を合わせて判断するのはもうお終い。


誰かが奪い取ってくれる『何か』が自分にあることを誇りに思うべきだ。

誰かに奪い取られても生きていける『器』である自分を誇りに思うべきだ。


この世で誰かが自分を略奪すべく虎視眈々、それに思いを馳せて準備万端。

そういう愚かさだけで存在理由を慈しんでしまえ。

人は誰だって、安心材料をくれる誰かを欲しているのだから。



というのが、柿喰う客『美少年』を観た自分の感想。


劇団史上最高傑作を打ちかましてくれた中屋敷法仁、永島敬三、大村わたる、田中穂先、加藤ひろたかに

感謝。


だから我々劇団員たちは、行き過ぎているかもしれない愛情で支えています。



『ただそこにあるだけで幸せ』だと思える事象が好き。


帰ったらこれを食べようって思うことだったり、ふと見上げた夜空にオリオン座がクッキリしてたり、下北沢を疾走する笑顔の子供とか、思い遣りの傍に佇む愛情とか、バスが揺れること、お客様の破顔や、風呂に浸かりながら吸う煙草、お気に入りのカフェのお気に入りの席、遠いようで近いようでやっぱり遠い事実、シロップたっぷりのフレンチトースト、痛んだ髪に染み込む大切なシャンプーコンディショナー、そして圧倒的な夕焼け時間。


それらに想いを馳せるだけで幸せだ。



俺は滅多に怒らない。

怒りが頂点に達した時どうなるのか知らなかったけどようやく分かった。


諦める。


許容がないならもうお手上げなんだなと知る。



本年も大変お世話になりました。

また来年もよろしくお願いします。

全て芝居でなんとやら。


良いお年を。


写真は下北沢のお気に入りのコーヒーショップ。


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posted by 玉置玲央 at 03:22| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
涙もろくなるのは年せいではないですね…
私はだいぶ年上ですが、ここ10年で泣いたのは…大切な人が亡くなった時、自分が一杯一杯で頑張っていた時にある方から言われた言葉に感動して、あとは些細な事で2〜3回です。人前で泣くのが恥ずかしいと思っているから、人目を気にせず泣くことは出来ないんです。
でも、俳優さんが物凄く努力して稽古を頑張って迎えた本番の公演を観た時は感動します!凄く!泣きそうになるくらい。だから舞台をまた観たいとハマるのだと思います。
昨日、女優さんが柴田理恵さんの事を『劇団の人だからチームを大切にするし、お芝居に対して本気で、そして自分を叱ってくれた』って言われていました。
大人になって何かに本気に取り組める俳優さんは人の心を動かせるし、とても輝いていると思います。
Posted by ガマロ at 2018年12月30日 10:54
初めまして。
「教誨師」で初めて玉置さんを拝見しました。理路整然と話しながらも目力に圧倒され引き込まれていました。今まで知らずして何と勿体ない事をしていたのか!と、自分のアンテナの感度不良さを認識しました。
これから色々な顔の玉置さんを見続けていけたらと思います。
劇団にも興味を持ち、今度の「美少年」も地方公演を玉置さんご出演なさらなくても観劇予定です。初めての劇団のお芝居楽しみです。いつかは息遣いの感じられる生の舞台で玉置さんを観たいです。
ブログも好きで楽しみにしています!
長々と失礼しました。
Posted by SU at 2018年12月30日 11:00
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